はじめに
「昨日はあんなに動けたのに、今日は布団から出られない」
うつ病とともに生きていると、そんな“波”に悩まされることがあります。
今回は、うつ病当事者である私・雨音が、
この“波”について実体験をもとにお話しします。
・何ができる日、できない日か
・波に振り回されないためにどうしているか
など、あくまで個人の一例ではありますが、
どこか共感してもらえたらうれしいです。
第1章|「うつ病の“波”って何?」
【体調・気分・考え方に“日によるムラ”があること】
私の場合、仕事であれば上司への報連相や作業効率、休みの日であれば趣味に取り組めるかどうかなど、
「できる日」と「できない日」がはっきり分かれます。
たとえば、仕事においては毎日行っているようなルーティン作業でも、
調子が良い日と悪い日では、かかる時間が倍近く違うことがあります。
昨日の続きの仕事でも、
昨日は上司や同僚と普通に相談しながら進められたのに、
次の日になるとまるで人が変わったように、誰とも話せなくなる。
そんなことが実際によくあります。
また、調子が悪い日には、普段はしないようなミスも増えがちです。
こうした「日による差」は、なかなか外からは見えにくいものかもしれません。
【私のもともとの気質】
私は、うつ病になる前から「完璧主義」かつ「べき論者」な気質がありました。
「与えられた仕事は責任をもって終わらせるべき」
「約束は守るべき」
「一度教わったことは、一人でできるようになるべき」
本来は“良いこと”とも言える考えかもしれませんが、
私の場合はそれが「当たり前」に変わってしまっていたのです。
「与えられた仕事は、責任をもって一人で完璧に終わらせるのが当然」
「一度教わったことは、次回からミスなくこなせるのが当然」
——そんなふうに、自分自身に対する要求がどんどん厳しくなっていたのだと思います。
【「さぼってるんじゃないの?」と言われてしまう理由】
日によって作業スピードや精度が大きく変わってしまうと、
上司や周囲から誤解されてしまうことも、残念ながら少なくありません。
でも、決して「さぼっている」わけではないんです。
私の場合、ひとつの仕事を終える前に――
- 「このまま終わらせて、本当にミスはないか?」
- 「報告用の文面はこれで正しいのか?」
- 「報告のタイミングは今で良いのか?」
など、普通の人からすると「考えすぎでは?」と思われるようなことまで、
延々と頭の中で確認してしまいます。
その結果、必要以上に時間がかかったり、
逆に焦ってミスが出たりしてしまうこともあるのです。
第2章|【実体験】私の「波」の現れ方
うつ病とともに暮らしていると、「昨日の自分」と「今日の自分」がまるで別人のように感じられる日があります。
私にも、調子が良い日と悪い日がはっきり現れることがあり、それは仕事や私生活にも大きく影響します。
【調子が良い日】
- 仕事が思うように進む(迷いが少なく、頭がクリアな感覚)
- 趣味の釣りやゲームに自然と手が伸びる
- 人と普通に会話できる(相手の言葉を自然に受け取れる)
【調子が悪い日】
- 同じ仕事でも、頭の中がざわざわして進まない
- 釣りもゲームも「やる気が起きない」どころか「リフレッシュする気すら起きない」
- 妻との会話すら避けてしまう(言葉を出すのも億劫になる)
昨日はスムーズにこなせていたことが、
今日はまったくできない。
それどころか、「なぜ昨日はできたんだろう?」とさえ思ってしまう。
うつ病と診断されてもう5年になりますが、
この“波”には、いまだに戸惑わされることばかりです。
もしかすると、これを読んでくださっているあなたにも、
「昨日と今日で別人のようだ」と感じる瞬間があるかもしれません。
そんなときは、どうか「自分のせいだ」とは思わず、
波があるのがうつ病の特性だと、少しでも受け入れられますように。
第3章|なぜ波があるのか、自分なりに考えてみた
うつ病の“波”にはさまざまな要因があると思いますが、ここでは私自身が感じている主な2つの原因について書いてみます。
あくまで個人の実感によるものであり、すべての方に当てはまるとは限りませんが、どなたかの参考になれば嬉しいです。
【1. 予定そのものが消耗の原因に?】
私は予定を立てるだけで、意外とエネルギーを消耗してしまうタイプです。
たとえば趣味である海釣り。
調子がいい日にはリフレッシュにもなりますし、釣れなくても自然の中にいるだけで心が晴れる感覚があります。
けれど、調子が悪い日には「準備が億劫」「行っても楽しめる気がしない」と感じてしまい、
出かけるどころか、釣りのことを考えるのもつらくなってしまいます。
また、天候などで予定通りにいかなくなると、
「こんなことで崩れるなんて自分はダメだ」と落ち込んでしまうことも。
普通の人から見れば「大したことないこと」かもしれませんが、
予定が思い通りに進まなかったときのストレスは、私にとってはかなり大きいのです。
【2. 睡眠と気候の影響】
睡眠の質がその日の調子に大きく関わっている、という実感があります。
主治医からも「とにかく睡眠を大切に」と言われました。
私の場合、午前1時〜2時に寝て、午前10時頃に起きると、いちばん調子が整いやすいように感じています。
ただし、「波が悪いとき」はそのリズムで寝ても調子はイマイチなまま。
“悪いなりの中でマシ”といった感じになるだけです。
気候の影響も無視できません。
寒暖差が大きい時期や、気圧の変化が激しい日は、
理由もなく気分が落ち込むことが増えるように思います。
「外に出るだけで疲れる」「朝からどんよりしている」
そんな日があるのも、この“波”の一因かもしれません。
第4章|“波”との付き合い方:私なりの工夫
うつ病の“波”は、コントロールしようとしてもうまくいかないことが多いです。
だからこそ私は、「波に逆らうのではなく、うまく付き合う」という視点を意識しています。
ここでは、私なりに工夫していることを3つご紹介します。
【1. できない日の「最低ライン」を決めておく】
私の場合、調子が悪い日でも「ここまではやる」と決めた“最低ライン”を設けています。
これは仕事でも私生活でも同じです。
◆ 仕事の場合
ありがたいことに、職場の上司も私の状態を気にかけてくれており、
「最低限これだけやってくれればOK」という基準を一緒に作ってくれました。
それ以上の業務については、
「急ぎでなければ、調子を見ながらで大丈夫」と言ってもらえており、
心の負担がぐっと軽くなっています。
◆ 私生活の場合
私生活では、その日“自然にできること”だけやると決めています。
お風呂や食事すら気が進まない日は、無理にやらないと決めています。
ただし、出社日など人と会う日は例外。
「最低限、他人に不快感を与えないレベルの身だしなみ」は整えるようにしています。
これは、私の病気を理解してくれている会社への最低限の誠意だと思っているからです。
調子が良い日だからといって、あれこれ詰め込みすぎてしまうと、
翌日に反動がきて寝込んでしまうこともありました。
そうならないよう、今は“あえて控えめに動く”ことを意識しています。
【2. ヘルスケアアプリで「波のリズム」をゆるく記録】
私はiPhoneとApple Watchを使っていて、「ヘルスケア」アプリの“心の状態”記録機能を活用しています。
- 記録できるのは「1日の気分」と「任意のタイミングでの気分」
- 通知機能を使えば、記録の習慣化もしやすい
- 気分の理由も選択式で記録でき、操作もシンプル
ある程度データが溜まってくると、自分の気分の波がグラフで見えるようになります。
波が見えると、「やっぱりこの時期は落ちてたな」と客観視できることもあります。
完璧に記録しようとせず、“ゆるく続ける”くらいがちょうどいいと感じています。
【3. 良い日の自分に「期待しすぎない」ことも大事】
うつ病になると、集中力や判断力などが以前より低下することもあります。
これは前の主治医にも言われました。
実際、私はよく
「前はこのくらいできたのに、なんで今はできないんだろう?」
と悩むことがありました。
だからこそ私は、調子が良い日ほど“ブレーキ”をかけるようにしています。
たとえば…
- 仕事を一気に増やさない
- 引き受けることは、「最低ライン」が確実に終わってから1つずつ
なぜなら、今日の調子が良くても、明日もそうとは限らないからです。
良い日を“取り戻すチャンス”にしすぎず、大切に使う。
それもまた、波と付き合っていくための知恵だと思っています。
無理をしない、でも完全に諦めない。
波があっても、うまくやっていける方法は人それぞれあると思います。
私の工夫が、誰かのヒントになれば嬉しいです。
まとめ
うつ病とともにある日々は、
まるでジェットコースターのように感情が揺れ動きます。
今回の記事では「今の職場は理解がある」と書きましたが、
過去の記事では「今の職場を辞めたい」とも綴っています。
一見、矛盾しているように見えるかもしれません。
でも、どちらも嘘のない“本心”です。
それくらい、日によって見える景色や感じ方が変わってしまう。
それが、うつ病という病気なのだと思います。
同じように、波の中でも懸命に生きているあなたへ。
この言葉が、少しでも寄り添うものになれたなら幸いです。
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